4月14日(日) 僕の小規模な奇跡
ー胃の底がじくじくと痛む
ー喉を焦がす日の光に満ちている
ーねっとりと、額の中を移動する熱と血液が頭皮から漏れているみたいだった
ー恐怖のずんどこ
ー体温が四月から七月になるのを感じた
ー寂寥感(ものさびしい)
ー脈拍が挙動不審
ー心に小さなささくれを生む
ー心血を注ぐ(心身の力のありったけを尽くして行う)
ー印刷ミスのように薄くなった記憶
ー悲鳴が爆竹のように飛び散る
ー大人の階段で踏み台昇降
ー臓器にストレスのぬか漬け
ースコーン、と後頭部を軽快にバットか何かで打ち抜かれて、痛みはなしに歯が全部抜けて代わりにポップコーンを詰められたとしか感じ取れない衝撃が、私を貫いた。
ー僥倖(偶然得る幸せ)
ーほわほわと幸福の空気が漂う。鼻の仲間でふわふわする心地だった。
ー失踪二割速歩三割よろよろ五割で到着
ー出来ればそれが植物のように光りを目指していればいいけど
ー悲観する
ー家屋のどこかでゴキブリが蠢いていることを想像したようなしかめ面
ー剣呑(あぶないこと)
ー吐き捨てるように
ー旋回する飛行機のように傾く
ー爛熟(熟れすぎていること)
ー鷹揚(おっとりして上品)
ー蜂の巣でも後頭部に埋め込まれたような痛み
ー今日も外は快晴で、洗濯物と鼻先がよく乾きそうだ。後者は犬なら困る。
ー杞憂(心配しなくていいことを心配すること)
ー早く明日になーれ、と願うほどに遠退く眠気
ー雨がざんざか降っている
ー豆腐を縦に置いてそのまま冷凍させたような外観である
ー飽食の時代に憤るおじさんみたいに憤慨してみた
ー席巻(片端から領土を攻めること)
ー世界最大級のワニが「俺の好物はキャベツ」とか宣言するくらいあり得ない
ー足の裏でパンパンと拍足しようかと考えたけど失礼かと思い直して無難に拍手した
ー摂理(自然界を支配する法則)
ー希薄な笑顔で表面を着飾った
ー太陽の光が黄色く滲む
ー庭に咲いて射る白い花が、温かい昼の風に吹かれて花びらを揺らす。五月にも程遠い四月の温暖な気候。心憎いほどの晴天の下で、
ーどろどろとした綿飴の元が、額を中心として身体全体に運ばれていくような、不思議な感触に浸食される。身体の内側から甘く、優しくなにかが食い破って出てきそうな、不安と高揚に心が晒される。ネジがいくつも緩んで、締められて。脳が解放されて、引き締められての伸縮を繰り返す。
ー売れ残った靴。大小、色も様々で。並べれば分かるけれど、お似合いになるやつはとても少ない。そして揃えても、足並みを合わせるのはきっと、とても難しい。だけど人は、別の靴の側に立とうとする。ともに歩こうとする。めいっぱい歩幅を広げて。或いは自分の歩き方を忘れて、ゆっくりと。私たちは懸命に努力する。自分を見失うのではなく、新しい自分に辿り着くために。
ー記念ごとは派手に騒いだ方がいい。印象深ければ、思い出は劣化しないから
ー人間、図々しさも大事です。宝物を最初に手にするのはいつだって強欲な人だから
ー努力は万人向けで、万能じゃなくて、でも無能じゃないから。だから、積み重ねることは確実な無駄とは限らない。
ー相手に合わせる気が全くないなら、そもそも人付き合いを求めてはいけない。
ー地に足が着いていないというよりその地面が陥没して、自分が浮いているかさえ足取りを摑めない私
ー似合わない靴を履くのを諦めたとして。私はその靴を、本当に捨てる必要があるのか。
ーあなたが間違えた原因は、自分を正しいと思ったことです。
ー才能というのは、味噌汁の味噌に似ている。味の調整や、適量の判断について勉強するとかそれ以前に、味噌がなければ味噌汁は成立しない。元がなければどうにもならないのだ。あー私も欲しかったな、赤味噌。じゃなくて才能。
ー記憶の焼却炉は時々、燃やし尽くしたはずの忌まわしい記憶を完全に再生してお届けするという、近未来でもあり得ないほど高性能な仕組みで、嫌がらせに心血を注ぐ。
ー完全無欠の恋愛を成就するのは一握りの人間だけなのだ
ー僕は常に自分にとって最良だと思う選択をして主人公を演じてきた
ー「好きです」の四文字に「ごめんなさい」の計十文字の告白は侘しすぎる