4月27日(土) 人間失格
ー暗然(悲しい、暗い)
ー転転(てんてん:一定しない)
ー呻吟(しんぎん:苦しんでうめく)
ー妙諦(みょうてい:優れた真理)
ー蠕動(うごめくこと)
ー伽藍(がらん:清浄甘粛な場所)
ー自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食い違っているような不安。
ー自分は怒っている人間の顔に、獅子よりも鰐よりも竜よりも、もっとおそろしい動物の本性を見るのです。
ー互いにあざむき合って、しかもいずれも不思議に何の傷もつかず、あざむき合っている事にさえ気がついていないみたいな、実にあざやかな、それこそ清く明るくほがらかな不振の例が人間の生活に充満しているように思われます。
ー苦しみを嘗める
ー海の、波打ち際、といってもいいくらいに海に近い岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学期が始まると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪のときには、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて海に漂い、波に乗せられ再び波打際に打ち返される、
ーいった女は、どんな気持で生きているのかを考える事は、自分にとって蚯蚓(みみず)の思いをさぐるよりも、ややこしく、わずらわしく、薄気味の悪いおのに感ぜられていました
ー弱虫は、幸福をさえ恐れるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられることもあるんです。傷つけられないうちに早く、このまま、わかれたいとあせる。
ーそれは世間が許さない
世間じゃない。あなたでしょう?
そんなことをすると世間からひどいめに逢うぞ
世間じゃない。あなたでしょう?
いまに世間から葬られる
世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?
世間というのは個人じゃないか
ーしてその翌日も同じ事を繰返して、
昨日に異らぬ慣例に従えばよい。
即ち荒っぽい大きな歓楽を避けてさえいれば、
自然また大きな悲哀もやって来ないのだ。
ゆくてを塞ぐ邪魔な石を
蟾蜍は廻って通る。(ギイ・シャルル・クロオ)
ー「飲もうか」と自分。
「よし」と堀木。
ー善悪の概念は人間が作ったものだ。人間が勝手に作った道徳の言葉だ。
ー悲劇(トラジディ)、喜劇(コメディ)、対義語(アントニム)、同義語(シノニム)
ー黒のアントは白、けれども、白のアントは赤。赤のアントは黒。
ー花のアントはおよそこの世で最も花らしくないもの、それこそ挙げるべきだ。なあんだ、女か。