4月4日(木) 僕の好きな人が、よく眠れますように
ー一番近くまで近づいて、そこからはどこまでもまっすぐに行く。文明人には、そういうことができるのかもしれない。
ー生き苦しいような、いたたまれないような、やるせない気持ちだった。
ー声は無菌室の中で反響を失い、溶けるように消える。好き、と声に出してみる。多分、僕の頭はちょっと、おかしくなっているんだと思う。
ーすごい好き。
俺の方が好きだよ。
全然わかってない。私の方が三倍くらい好き。
そんなことないよ。おれなんか好きスパークだよ。溶接したい。
私なんて、止まって見えるくらい好きだよ。
ー残像にみえるくらい好き。
ー二つに見えるくらい好き。
ー全米が震えるくらい好き。
ー革命的に好き。好きレボリューションだよ。
ー五感全部が好きって言ってる。
ー蒸し返すのはヤマザキの蒸しパンだけで十分ですよ。
ーうそ、温めないでしょ。
温める人もいるよ。
サンドイッチは温めるの?
温めません。
めぐは温めた方がいい?
うん。
ーねえ、好きな人の匂いがする。
何それ、どんなの?
静岡のあったかいところで、素直にまっすぐ育ったみかんの匂い。
ー一日に二十五時間は会っていたいな。
私は二十六時間がいい。
ーねえ。
ん?
月より好き。
私は海より好き。
おれは、銀河より好き。
私は、銀河が砕けても山田さんを守るよ。
ー好き、特別とか絶対とか永遠とか。
ー生まれて初めて、ほしいと言えた気がした。
それはなんだか、嬉しいような、泣きたいような気分だった。
彼女が欲しかった。僕は生まれて初めて、本当に、何かを欲しいと言えたんだと思う。
ー僕らのことは、今は夢でいいと思った。離れたくないと思っていること。ずっと一緒にいたいと願っていること。今は夢でも、いいじゃないか。
ーだっておれめぐのことを思っただけで、お湯を沸かせるよ。
ー私なんて、発電できるよ。停電の村を救ったことがあるし。
ーおれが君のことを好きになったとき、遠くで星が生まれたらしいよ。
ー絶対や永遠なんて、探したってどこにもない。春になったらクマが幸せを届けてくれるわけでは全然ないのだ。