4月6日(土)絶対、最強の恋のうた
ー的じゃなくて、別のものを射貫くことにしたんです。
例えば男子とか。
ー僕は彼女に何かを言おうと思っていた。何か大切で、きらきらした言葉を。正直で、丁寧で、一歩先に踏み込むような言葉を。
ー僕らはわりとどうでもいい話をしながら、鍋をつつき、酒を飲んだ。
ー鶏肉がメインの鍋には魚肉ソーセージが入り、豚肉がメインの鍋には餃子が入った。
ー痺れるような酔いと、立ちこめる煙の中、僕らにはそれが正当な考えに思えていた。
ー私たちは次第に手の力を緩め、指だけを繋いだ。頼りないけど確かな、宇宙で一番素敵なつながり方だと思った。
ー私の過去にあったいろんなことは、この人に話すために存在したような気がした。
ー私たちは水槽の前に並び、ハリセンボンに向かって中指を立てた。この世の不条理と哀しみに、静かに起これ!ハリセンボン!
ー彼はいつも、とても優しいキスをした。波打ち際で春の波が、寄せては返すみたいに。ゆっくりと、柔らかに。
ー恋はスタンプカードのようなものだ、と私は思う。キスをして、好きだと思って、何かをわかり合って、優しい気持ちになってー。 そんなことがある度に、私たちはスタンプを押す。1人で押すこともあるし、2人で押すこともある。スタンプが全て集まったら、次のカードを貰いに行こう。
ー絶対にって祈りたくなる気持ちは、確かに今ここにある。絶対だって信じる気持ちも確かにある。だから恋人たちは歌えばいい。絶対に最強な恋のうたを。
ー男子はいつだってバカで、女子はいつだって欲が深い。男子は溢れるほどの煩悩を抱え、女子は悲しいほど甘いものが好きだ。女子はいつだって真剣勝負だ。
ーしばらく笑い合ったあと、僕はまためがねをかけた。ギアをDレンジに戻し、那須高原に向けて車を走らせた。